高次脳機能障害の症状と等級、賠償

 

交通事故により頭部に外傷を負い、脳を損傷してしまった場合、ときに重症が残ることがあります。
例えば、意識が戻らなくなってしまった場合、「遷延性(せんえんせい)意識障害」と呼ばれます。
いわゆる植物状態のことです。

 

 

また、意識が戻ったとしても、脳に障害が残る場合、「高次脳機能障害」が疑われます。
高次脳機能障害とは、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の認知障害によって、社会的な生活が困難となった状態を言います。

 

 

ここでは、高次脳機能障害について、詳しくご説明いたします。

 

 

1.見落とされがちな高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害には、軽度なものから重度のものまで、その症状はさまざまです。
しかし、特に軽度な高次脳機能障害の場合、交通事故の被害にあった方自身に自覚がなく、見落とされやすいという点が特徴です。

 

 

万が一、被害にあった方に自覚症状がなく、そのために高次脳機能障害を疑わせる症状を医師に伝えていないと、高次脳機能障害と認定されるために必要な記載が診断書にされていない危険性があります。

 

 

あるいは、高次脳機能障害と疑われていたとしても、被害にあった方がご自身の症状に関して、医師にうまく症状を伝えることができない危険性もあります。

 

 

このような場合には、結果的に低い後遺障害等級にしか認定されないリスクがあります。

 

 

そこで、交通事故の被害にあった方について、事故前と比べて様子が変わったと、ご家族の方などが感じた場合には、できるだけ早い段階で、専門家の弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

 

 

高次脳機能障害については、次の4つの点に着目します。

・意思疎通能力

・問題解決能力

・作業負担に対する持続力・持久力

・社会行動能力(協調性)

 

 

次のような症状がある場合には、高次脳機能障害を疑うべきです。

・新しいことを覚えられない

・疲れやすくなり、意欲や行動力が低下した

・感情のコントロールができず、暴力を振るうこともある

・記憶力が低下した

・同じ話を何度もするようになった

・会話がうまくできないようになった

・人格が変わったと言われるようになった

 

ご家族の方などが、事故後、できるだけ早い段階で、被害にあった方について、事故前と事故後の変化を感じ取り、弁護士に相談することが必要不可欠と言えます。

 

 

 

2.高次脳機能障害が残った場合に認められる後遺障害等級と損害賠償

高次脳機能障害とされると、後遺障害等級に認定され、損害賠償額も高額なものとなります。
具体的には、高次脳機能障害の症状により、認められる後遺障害等級も変わってきます。

 

 

高次脳機能障害になった場合に認められる後遺障害等級

・別表第一第1級 4000万円

・別表第一第2級 3000万円

・別表第二第3級 2219万円

・別表第二第5級 1574万円

・別表第二第7級 1051万円

・別表第二第9級 616万円

・場合によっては、別表第二第12級(224万円)や第14級(75万円)のこともあります。

 

 

以上に記載した金額は、あくまで自賠責保険から支払われる金額の上限です。
自賠責保険は最低限度の補償ですから、それを上回る損害額の部分については、多くの場合、相手方の任意保険より支払を受けることとなります。

 

 

後遺障害等級に認定されると、後遺障害を負わされたことそのものに関する「後遺障害慰謝料」を請求することが可能となります。
加えて、後遺障害を負わされなければ将来得ることができた収入である「後遺障害逸失利益」についても請求することが可能となります。

 

 

これら2つの損害だけでも非常に高額な請求が可能となりますから、できる限り早期に高次脳機能障害の疑いがあることに気がつき、弁護士に相談した上で、適切な記録を残し、医師による適切な検査を受けることが極めて重要となるのです。

 

 

高次脳機能障害で適切な等級認定を得るためには、画像所見があること、交通事故後に昏睡状態や反昏睡状態又は意識障害が一定程度継続したことや、脳挫傷・くも膜下出血等の診断があること、高次脳機能障害の症状を疑う症状があるといったことが必要です。

 

 

 

3.高次脳機能障害が残ったら、一日でも早く弁護士へ

 

等級認定を受けるためには、次の点がポイントとなります。

・医師により、適切な時期に、適切な検査を受けること

・ご家族から見た患者の症状や介護の状況、内容等につき、できる限り事故直後から継続的に記録を付けておくこと

 

 

この点、早期に弁護士に依頼をすることで、重要な検査や記録の付け方などについてアドバイスを受けることができます。
必要な場合には、弁護士が病院等に同行することもできます。

 

 

交通事故により高次脳機能障害となるような頭部外傷を受けた場合、ご本人やご家族の方は、事故から間もない間は、その後の損害賠償についてお考えになることは難しいかもしれません。

 

 

しかし、適切な後遺障害認定を受け、適切な損害賠償を受けるためには、早期に弁護士に相談・依頼することが極めて重要です。

 

 

 

4.当事務所の高次脳機能障害サポート

以上をまとめると、高次脳機能障害の場合、交通事故の被害にあった方がその症状に気がつかないことが多くあります。
あるいは、ご家族などの方も、交通事故のショックで人格が変わってしまったなどと安易に考えてしまい、まさか交通事故による後遺症だとお考えにならないことがあります。

 

 

少しでも、おかしいと思った場合には、必ず弁護士にご相談ください。

弁護士に相談することにより、

・医師により、適切な時期に、適切な検査を受けること

・ご家族から見た患者の症状や介護の状況、内容等につき、できる限り事故直後から継続的に記録を付けておくこと

など、適切な後遺障害等級を受けるために必要な知識や情報を得ることができます。

当事務所では、高次脳機能障害の被害にあわれた方を全力でサポートしますので、ご相談いただければ幸いでございます。

 

 

上記以外にも、当然のことですが、相手方保険会社との交渉は全て弁護士が担当します。

交通事故により頭部に損傷を負い、高次脳機能障害と診断される可能性があるような場合、将来に関する不安に押しつぶされそうになり、損害賠償などといったことを深くお考えになることは難しいかと思います。

 

 

しかしながら、相手方保険会社と話し合いをしたり、ときに交渉をしなければならず、相当なストレスがかかります。
弁護士に委任していただければ、相手方保険会社との話し合いや交渉は全て弁護士がしますので、そのようなストレスから解放され、治療等に専念することが可能となります。

 

 

その他、高次脳機能障害の中でも重度の障害が残ってしまった場合には、次のような点についてもサポートいたします。

 

 

① 成年後見の申立て

重度の高次脳機能障害を負わされた場合、被害にあった方自身が示談や訴訟などの当事者になることができなくなってしまうことがあります。
このような場合には、家庭裁判所において成年後見人を選任してもらい、成年後見人によって損害賠償請求の示談や訴訟をしてもらうこととなります。

 

 

当事務所では、成年後見人申立ての手続をサポートさせていただくことはもちろん、成年後見人に就任することも検討可能です。

 

 

② 労災保険

交通事故の被害にあったのが通勤中や勤務中であれば、労災として、労災保険を受け取ることができます。
勤務先の会社が労災保険について教えてくれるとは限りませんので、労災保険の申請についてもサポートさせていただきます。

 

 

③ 障害年金

高次脳機能障害となった場合、厚生年金や国民年金の保険料を支払っていれば、障害保険を受け取れる場合があります。
障害年金は、原則として、受傷時から1年6か月が経過してから申請することになります。
年金受給の申請についてもサポートさせていただきます。

 

 

④ 精神障害者保健福祉手帳や身体障害者手帳

交通事故によって生じた精神障害が重度である場合は、精神障害者保健福祉手帳を取得できます。
また、重度心身障害者医療費助成制度等による国の手厚い補償を受けことができます。
その他、身体に何らかの障害が残ってしまった場合は、身体障害者手帳を取得できます。