【まとめ】休業損害と休業補償の違いとは?弁護士が解説

休業損害とは

交通事故によりお怪我をしたために、お仕事などができなくなってしまうことがあります。
このような場合に、交通事故によって怪我を負ってしまい、お仕事を休まなくてはならなくなってしまったために得られなかった収入や賃金を加害者側に請求する損害を休業損害と言います。

休業損害の計算方法は?

計算方法は、いくつかあります。

自賠責保険に請求する場合


休業損害=①1日あたり6100円×②休業日数
※①1日あたり6100円を超えることを証明できる場合は、1日あたり1万9000円を限度として実際の損害額が認められます。
※②休業日数は、有休を使った場合も含まれます。

任意保険等に請求する場合


休業損害=①1日あたりの基礎収入×②休業日数
※①1日あたりの基礎収入の計算方法
1日あたりの基礎収入=事故前3か月の収入÷90日
   ※①サラリーマン(給与所得者)の基礎収入
基本給のほか、各種手当や賞与も対象となります。
   ※①専業主婦(夫)の場合
見落としがちですが、専業主婦(夫)でも、休業損害を請求できることが多くあります。
基礎収入は、賃金センサスに基づく平均年収額÷365日で算定します。
(令和元年賃金センサスは、女性の平均年収額388万0100円です)
   ※①自営業の場合
事故前年の申告所得(収入額-必要経費)÷365日

適切な額の休業損害を受け取る方法は?

自賠責基準の請求なのか、任意保険等への請求なのか、区別しましょう。

いずれに対する請求かにより、請求金額が変わってきます。
請求する相手方も違います。自賠責基準の場合は相手方の自賠責保険で、任意保険の場合は相手方の任意保険になります。

休業損害証明書


会社員(給与所得者)の場合、勤務先に、休業損害証明書を書いてもらいましょう。
休業損害証明書は、勤務先に、正しく記載してもらいましょう。

保険会社から休業損害を打ち切られた場合の対処方法は?

事故により仕事ができなくなってしまっている場合、相手方の保険会社に休業損害を請求していることが多いと思いますが、保険会社から、休業損害が打ち切られてしまうことがあります。

保険会社も医療機関より診断書等を取り寄せて、治療経過を見ています。その上で、症状固定などと判断し、休業損害の支払を打ち切ってくることがあります。実情としては、保険会社が支払う金額を少なくしたいという理由があるのかもしれません。また、症状固定を判断するのは、保険会社ではなく、医師だと考えるべきです。
 このような場合は、症状を正しく伝え、治療を継続する必要性が高いことを保険会社に説明していくと良いでしょう。
 特に、むち打ち症状などは、外見に所見が表れにくく、打ち切られる時期が早くされてしまうことが多くありますから、注意が必要です。
 いずれにしても保険会社から打ち切りを打診されたとしても、簡単に応じるべきではありません。
対処方法としては、保険会社に治療の継続が必要なことを説明することです。必要であれば、その旨を医師に書類(診断書や意見書等)を書いてもらっても良いでしょう。
それでも保険会社が休業損害の支払を打ち切ってきた場合には、損害賠償の前払い(仮払い)をしてもらう、健康保険で治療を続ける、自賠責に被害者請求や後遺障害等級認定申請するといった方法が考えられます。

休業損害と休業補償?

休業損害と休業補償の違い?


似た言葉で、似たものですが、違うものです。
休業補償は、労災保険から支払われる給付の一つで、勤務先の業務中又は通勤中の事故のみが対象とされます(業務災害と通勤災害)。請求先も、労災保険となります。
これに対し、休業損害は、交通事故全般において、加害者側に請求する損害賠償金です。請求先は、自賠責保険や任意保険等になります。
休業補償(労災)では過失相殺がされないのに対し、休業損害では過失相殺がされるという点も大きな違いです。

休業補償(労災)の金額は?

休業補償(労災)の金額は、次の計算により算出されます。
①休業補償  =給付基礎日額の60%×対象日数
②特別支給金=給付基礎日額の20%×対象日数
③合計     =給付基礎日額の80%×対象日数
※給付基礎日額
交通事故の発生日の前3か月間の賃金総額÷当該3か月間の総日数
※3か月間の賃金総額には、臨時で支払われた賃金、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金、現物給付などは含まれません。
※給付基礎日額
休業最初の3日間は、待機期間として対象外とされます。
 ①休業補償は休業した日の収入を補うもので、②特別支給金は労災福祉の観点から給付される援護金です。

休業補償(労災)を受け取った場合でも、さらに、休業損害を請求できます。


休業補償を労災で受け取った場合、簡単に言ってしまえば、給料の8割が支給されることになります。差額については、休業損害として、相手方側に請求することが可能です。その際、注意しなければならない点は、休業損害の請求は、上記①休業補償のみを支給済みとして計算し、上記②特別支給金を支給済みとして計算しないため、差額は40%となります。
 つまり、最終的には、①休業補償で60%、②特別支給金で20%、③休業損害で40%、合計120%を受け取れることとなります。

休業補償(労災)の請求方法


勤務先を通じて、労働基準監督署長宛に請求書を提出します。請求書は、勤務先において入手してもらうか、厚生労働省のホームページなどから入手できます。
労働基準監督署の決定により、厚生労働省から支給されます。

休業補償(労災)を受け取れる期間は?

原則として、傷病が治癒するか、症状固定の診断を受けるまでとされます。
ただし、療養開始後1年6か月が経っても治療が終わらず症状固定に至らない場合には、労災に障害(補償)給付(いわゆる後遺障害等級のようなものです)の申請をすることになります。等級に認定された場合には、障害(補償)給付、障害特別一時金や年金、障害特別支給金を受け取れます。手続としては、必要書類を整え、労働基準監督署に提出することになります。
等級に認定された場合は、休業補償から傷病補償に切り替わります。
等級に認定されない場合には、引き続き、休業補償が支給され続けることになります。

まとめ

 以上ご説明させていただいたとおり、交通事故の被害に遭った場合には、休業損害を請求することができます。
 さらに、交通事故が業務中のものであったり、通勤帰宅途中のものであったりした場合には、労災に休業補償を請求することができます。
 休業損害と休業補償の調整や請求方法など、あるいは、休業損害の請求そのものについては、手続が煩雑であったり、相手方保険会社との交渉でトラブルになることが一定数あります。
そのような場合には、休業損害や休業補償に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。