民法改正で交通事故の賠償金や遅延損害金はどうなる?【弁護士解説】
民法改正が交通事故被害者に与える影響
あまり知られていないことだと思いますが、民法が改正され、2020年(令和2年)4月1日から施行されています。
民法改正は、交通事故における損害賠償請求にも強く影響します。
例えば、民法改正により法定利率が下げられました。
改正前は5%だったのですが、3%に改正されました(より正確には変動利率の規定があるのですが、ここでは割愛します。)。
ただし、2020年(令和2年)4月1日よりも前に発生した交通事故の場合は、改正前の5%が適用されます。解決が2020年(令和2年)4月1日よりも後であっても、5%されます。
ここでは、遅延損害金と後遺障害逸失利益について、ご説明します。
(1)遅延損害金
交通事故による損害賠償請求は、相手方から賠償がされるまで、事故日から遅延損害金が発生します。
実際の示談交渉では、保険会社が遅延損害金を支払わない形で示談することが殆どですが、訴訟の場合は、遅延損害金まで認められることが多くあります。
交通事故の損害賠償請求について解決までに時間がかかることは一定数あり、この遅延損害金も賠償金に大きく影響することがありますから、無視できない点となります。
(2)後遺障害逸失利益
交通事故により後遺障害等級が認定された場合、後遺障害の逸失利益が認められます。
逸失利益というのは、後遺障害が残ることにより、本来であれば得られるはずであった収入の一部が失われたことによって認められる損害です。
後遺障害逸失利益の計算は、複雑なのですが、就労可能年数から導かれるライプニッツ係数を用いて算定します。これは、将来得られる収入から、利息分を割り引くための計算です。
このライプニッツ係数が利息5%を基準としているため、法定利率に関する改正がライプニッツ係数の算定、つまり、後遺障害逸失利益の算定に大きく影響してくるわけです。
なお、交通事故発生が改正民法の施行前であったが、症状固定ないし後遺障害認定が改正民法の施行後であったというケースも多数発生することと思われます。
このようなケースにおいて、法定利率を5%とするのか3%とするのかという問題が発生するわけです。
この点については、一律に交通事故発生時の法定利率を採用するという考え方が有力なようです。
この考え方によれば、施行日より前に発生した交通事故は遅延損害金も後遺障害逸失利益も5%、施行日後に発生した交通事故であれば3%になることになります。