交通事故ご遺族の方がすべき賠償とは

交通事故はある日突然発生します。
場合によっては皆様の大切なご家族やご友人が交通事故の被害にあい、お亡くなりになられてしまうケースもあります。被害者のご家族やご友人の悲しみは計り知れないものがあります。

死亡事故の損害賠償請求は、被害者はお亡くなりになられているので、被害者のご遺族の方が請求することとなります。
この場合、そもそも相続人がどなたなのか確定する作業に困難を伴うケースもあります。戸籍を集めるにしても容易でないことがあります。そのような場合にも、弁護士に相談すべきです。

相続人が確定したとしても、保険会社が発生した損害のすべてを賠償してくれるとは限りません。保険会社が、実際に請求できる金額よりも相当程度低い金額を示談として提案してくるケースが多々あります。特に死亡事故の場合は、損害額も高額に及ぶため、保険会社は少しでも減額しようとしてくる傾向があります。
示談する前に、必ず弁護士にご相談ください。

 

事例

保険会社の提示額
約3000万円
 ⇒  弁護士介入後の適正な賠償額
約5000万円

 

被害者のご遺族の方が請求できる損害賠償は、下記の4つの損害賠償になります。

 

死亡事故における損害賠償の4分類

 

分類

項目

死亡するまでの怪我による損害

救助捜索費、治療関係費、休業損害など

葬儀費

戒名、読経料、葬儀社への支払いなど

逸失利益

本人が生きていれば得られたはずの収入

慰謝料

被害者および遺族に対する慰謝料

 

葬儀費

葬儀費は葬儀そのものにかかった費用だけではなく、49日法事の費用、仏壇購入費、墓碑建立費が認められる場合もあります。

葬儀費には上限があり、自賠責保険では60万円までとされていますが、弁護士基準では130万円~170万円程度が適切とされています。

なお、香典返しなどの費用は葬儀費には認められていませんので注意が必要です。

 

慰謝料

死亡事故における慰謝料は、損害のなかでも最も高額な項目となりますので、保険会社の提案が適切なものか十分に注意してみる必要があります。

 

慰謝料の場合も、自賠責保険の基準、任意保険の基準、弁護士基準があり、それぞれによって慰謝料の金額が大きく異なります。十分に確認することが必要です。

弁護士が介入することにより、慰謝料の金額を大幅に増額することが期待できます。ぜひご相談ください。

 

①慰謝料の種類

被害者が死亡した場合の慰謝料には、大きく分けて2つの慰謝料があります。 
1つ目は亡くなられた被害者ご本人の慰謝料、2つ目はご遺族の慰謝料です。


被害者本人の慰謝料


慰謝料とは、その交通事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償です。
死亡した被害者ご本人の慰謝料が認められています。
具体的には、相続人であるご遺族の方が、加害者に対して、被害者本人の慰謝料を請求することになります。

ご遺族の方の慰謝料


被害者本人の慰謝料だけでなく、ご遺族の方固有の慰謝料も認められています。
ご遺族の方の慰謝料は、亡くなった被害者本人が受けた精神的苦痛とは別のものと考えられています。
したがって、被害者の父母、配偶者、子ども等のご遺族の方が、固有の慰謝料を請求することができます。

②死亡慰謝料の具体的な金額は?

慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準の3つがあります。
順に、ご説明します。

 

自賠責保険の基準の慰謝料

対象

ケース

慰謝料金額

被害者本人

350万円

被害者の父母、配偶者、子供

遺族が1名の場合

550万円

被害者の父母、配偶者、子供

遺族が2名の場合

650万円

被害者の父母、配偶者、子供

遺族が3名以上の場合

750万円

※死亡者に被扶養者がいる場合には、200万円が加算されます。
※自賠責保険から支払われる賠償金には上限が定められています。具体的には、賠償金額の合計3000万円が上限とされています。

 

任意保険の基準の慰謝料(現在は廃止されている従来の基準)

ケース

慰謝料金額

一家の支柱であった場合

1,450万円

高齢者(65歳以上で一家の支柱でない場合)

1,000万円

18歳未満(有職者を除く)

1,200万円

上記以外(妻・独身男女)

1,300万円

※任意保険の統一基準は廃止され、現在各保険会社が独自に支払い基準を作成しています。
従来の基準に準じている保険会社では、自賠責保険の基準よりも少し高い金額が採用されていることもあります。
もっとも、任意保険基準は、一般的には、裁判所基準より低額となります。

・裁判所(弁護士)基準
裁判実務では、死亡慰謝料は、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合算した金額として取り扱われています。

 

弁護士基準の慰謝料

ケース

慰謝料金額

一家の支柱の場合

2,800万円

母親、配偶者

2,500万円

その他の場合

2,000~2,500万円

 

③死亡慰謝料が増額される場合とは?

死亡慰謝料は、増額が認められることがあります。
例えば、事故態様が悪質の場合や、加害者の態度が不誠実の場合があります。
事故態様が悪質の場合とは、飲酒運転や信号無視などの場合があります。
加害者の態度が不誠実の場合とは、ひき逃げをして救護義務を怠ったとき、警察に対して虚偽の供述をしたときなどです。

④死亡慰謝料の請求方法は?

加害者側と示談交渉をして、請求することになります。
具体的には、加害者が加入している任意保険会社と示談交渉をすることが多いです。
その場合、被害者のご遺族の方には専門的な知識や経験がないことがほとんどだと思いますが、保険会社の担当者と交渉することは難しいはずです。また、保険会社による提案金額は、裁判所基準よりも低額なことがほとんどですから、示談する前に、弁護士に相談すべきです。
なお、示談が成立しない場合には、訴訟提起して、解決を図ることになります。訴訟提起となると、難しさは倍増しますから、やはり弁護士に依頼すべきだと思います。

⑤慰謝料を複数の相続人で分ける場合の方法は?

基本は、相続人間で、法定相続分に従って分けることとなります。
なお、ご遺族固有の慰謝料を受け取る場合は、被害者本人の慰謝料は法定相続人が受け取り、ご遺族固有の慰謝料はその方が受け取ることが多いかと思います。
いずれにしても、口約束で分けてしまい、後にトラブルにならないように注意する必要があります。

 

逸失利益


交通事故で被害者が死亡した場合、死亡慰謝料のほかに、逸失利益という損害を請求することができます。
逸失利益というのは、被害者が生きていれば得られるはずであった利益のことです。

逸失利益の計算方法は、原則として、次の計算式になります。
①亡くなった方の基礎収入 ×② (1-生活費控除率) ×③稼働可能期間に対応するライプニッツ係数

 

①亡くなった方の基礎収入
亡くなった方の年収になります。

②生活費控除率
被害者が生きていれば生活費が必要になりますが、死亡すれば生活費がかからなくなるため、その分を差し引く計算です。

③稼働可能期間に対応するライプニッツ係数

生きていれば毎年受け取ることになる収入は、損害賠償金として一括して支払われます。この点に関する調整がライプニッツ係数というものです。

 

死亡事故を弁護士に依頼するメリットとは?

まず、ご遺族の方は、相手方保険会社と示談交渉することとになり、一方的に、金額を提案されるだけのことがほとんどです。ですが、弁護士に依頼することで、ご遺族の方は、相手方保険会社と示談交渉をしなくて良いことになり、その意味でのストレスから解放されます。
次に、弁護士が相手方保険会社と示談交渉をすることで、慰謝料等の増額が期待できます。
死亡事故の損害賠償はとても大切なお話ですから、お一人で悩まず、お気軽に弁護士にご相談いただけましたら、幸いです。